インソールによる疲労軽減や運動能力のアップ

はじめに

従来のインソール理論は、土踏まずのサポートがしっかりしたもので内足部のアーチをサポートする。これは低下した足の機能を補う場合に非常に有効な方法である。しかし、内足部のアーチを押さえつけることは、足の運動性を制限することにもつながる。また、外足部のアーチに対してのサポートが不十分になる。

そこでBMZ cuboid balanceインソールの理論は、「足本来の機能を生かし、高める」というコンセプトのもとに、足の指を動かす筋肉を圧迫せずアーチサポートを行う独自のデザインで、「支える」・「動く」という二つの足の機能を裸足以上のレベルに導くとしている。

それを可能にするために、BMZ社製インソールには、以下の2つの特徴がある。

  1. 足の骨格バランスを整える『立方骨』をサポート
    足の「安定性」と「運動性」の起点となっている立方骨(cuboid)を中心にサポートすることで、足が本来持っている機能を回復させる。

  2. 足や体のアラインメント(骨格バランス)をより自然に適正な状態へ近づける
    足の骨格バランスが整うことで、その上に位置する脚、骨盤、上半身の骨格も適正な状態へと矯正される。

以上より、身体全体のバランスが改善され、運動効率の良い筋疲労の少ない体に導くとされている。


先行研究

山地の先行研究では、BMZ cuboid balance理論によってボディバランスが良くなり、敏捷性の向上につながるかについて検証されており、実験内容として20秒間反復横とびを行った。

結果として、平均3.4回の増加が見られ、BMZインソールの着用が敏捷性に好影響を与えることが証明されている。また、被験者からは「反復横とびの切換えがスムーズにできる」「安定感が増した」などの声があった。


目的

先行研究で敏捷性に好影響を与えることは証明されていたが、野球の内野手やサッカー選手などの切換え動作を頻繁にかつ長時間行う競技(疲労を伴う競技)において、BMZインソールを用いることで、BMZインソールの特徴である「運動効率が良く筋疲労の少ない体に導く」のかどうかを検証する。
つまり、BMZインソールの着用が敏捷性の維持につながるか否かを実験目的とする。


方法

実験

ⅰ. 試技

敏捷性テストとして一般的に用いられる「反復横とび」を行う。
評価法として、文科省で定められた20秒間では敏捷性因子だけでなく持久力など他の体力因子が混在する可能性がある。
そこで、敏捷性の維持に着目し、酒巻ら(1974)の報告に基づき、以下を実施。

  • 10秒間全力反復横とび+90秒休息を1セット

  • これを5セット実施

  • 身体を乳酸蓄積による不完全回復状態にし、身体疲労に近い状態を生成

  • インソールあり・なし各1回実施

  • 全試技終了後、アンケート調査を実施

ⅱ. 実験場所

F大学 第二記念会堂フロア

ⅲ. 被験者

  • 野球部内野手6名

  • サッカー部6名

  • 合計12名(右足が利き足の者)

※身長・体重・競技歴も把握する。

ⅳ. 検者構成

  • カメラ2名

  • タイマー1名

  • 筋電2名

  • 合計5名

ⅴ. 準備機材

カメラ2台、三脚2脚、筋電一式、メジャー、マーカー、ラインテープ、筆記具


分析

① 動作解析

  • CASIO社製カメラを用い、キャリブレーション後、正面より250コマ撮影

  • 二次元動作解析(分析ポイント:20点)

② 筋電計測

  • 被験筋:前脛骨筋、腓腹筋外側、大腿直筋、ハムストリングス、中殿筋(右下肢計5筋)

  • サンプリング周波数:1000Hz


評価項目

映像解析

  • セット間反復横とび回数

  • 接地時間

  • 体幹傾斜変位量(両肩峰を結んだ線と床面との角度の動揺性)

参考:笹木(2006)によると、体幹傾斜変位量が小さいほど接地時間が短い傾向あり。今回は疲労との関係性も検討。また、重心動揺についても検討。

筋放電

  • 仰木(2007):疲労により筋電図振幅が一時的に増加することがある

  • 森谷(1993):乳酸がたまらない運動では筋放電量の増加はないと予想される

  • 筋電周波数帯が高周波→低周波に変化する傾向も周波数分析で検討

アンケート調査

  • 「インソールの着用によって動きの違いは感じましたか?」

  • 「インソールによって疲労は少なくなりましたか?」

  • その他、臨機応変に対応


仮説

  • インソール着用時には、接地時間が短縮し、体幹傾斜変位量が小さくなる。

  • インソールの着用により、疲労要因が減少することで筋放電量が減少する。