立方骨サポートインソールが歩行に与える影響について

奥村宣久¹), 木村浩一¹), 侘美靖²), 中村充雄¹), 高橋毅³), 金澤公彦³)

  1. 北海道文教大学人間科学部作業療法学科

  2. 北海道文教大学人間科学部健康栄養学科

  3. BMZ

第44回日本作業療法学会(2010年)


はじめに

  • ヘルスプロモーションにおいて,散歩やウォーキングは導入しやすく,有効な作業といえる。

  • しかし,健康上の問題を持つ多くの人は,痛みや歩行に対するエフィカシーの低さから,歩くことを敬遠する可能性がある。

  • この問題に対するアプローチの一つに,インソール(足底装具,足底板,足底支持板,足底挿板,オーソティックス)デバイスが挙げられる。


立方骨サポートインソール (= BMZインソール)

  • スポーツ選手の使用実績はあるが、効果は科学的に検証されていない。

  • 高齢者・障がい者に対する適応について,まだ検討されていない。

実績例:
2009 スノーボードアルペンWC 準優勝 竹内選手
2008 世界選手権優勝 複合団体チーム
2009 INA-FID 世界選手権三冠王 田川選手


インソールの違いと特長

  • 既存インソール:内側アーチ,中足支え,内側ウェッジ,外側ウェッジ,踵部挙上などに焦点。

  • BMZインソール:外側アーチを補正→内側アーチを整える。

  • 土踏まずを直接持ち上げないため,筋肉や血管を圧迫しない。

  • ※立方骨に着目したものはない。


BMZインソールの構造

構造①

  • 立方骨周辺がもっとも高い。

構造②

  • ウレタン・ゴムの三層構造。

  • 金型でプレスしモノコック構造的に。トーションやクッションの調子が良好。

  • 肉抜き部によるラウンド構造。回内・回外に有利。

  • ベクトル:外側アーチ→母指球。


研究目的

  • BMZインソールが歩行時の三次元加速度に与える変化を明らかにし、ヘルスプロモーションにおける可能性を考察。

  • 仮説:

    • BMZインソール装着により、バランスが向上する。

    • BMZインソール装着により、パフォーマンスが向上する。


方法

  • 対象者:24名(男性12名 48.9±6.8歳、女性12名 40.9±6.5歳)

  • 整形外科的疾患を持つ者は除外。O脚・X脚・偏平足・外反母趾・軽度の腰痛等を含む。

  • 20m自由歩行、同一形状の紐なし運動靴を着用。

  • 三次元加速度センサー(LegLog)、フットグラフによる足圧分布確認。

  • 4周期の歩行から加速度の総和・変動係数を算出。Paired t-test により統計処理(ystat2006使用)。


結果:リサージュ図形変化

  • 規則的な図形に変化。前額面・水平面でコンパクト化。左右対称性が明確に。


結果:加速度変化

  • 加速度総量:有意差なし。

  • 水平方向の変化量:変動係数が有意に低下(p<0.01)。

  • 垂直方向の変化量:変動係数が有意に低下(p<0.01)。

  • 前後方向の加速度:変動係数に有意差なし。


考察

  1. リサージュ図形の対称性改善=バランス改善への効果示唆。

  2. 加速度変動の減少=規則性強調・無駄な動きの減少。

  3. 前後方向の加速度には有意差なし→運動パフォーマンス向上の直接証明とはならない。


まとめ

  • BMZインソールは立方骨サポートを重視し,既存品とは異なる。

  • 歩容への影響を三次元加速度で検討。

  • 上下・水平方向の加速度ばらつきが低下→バランス向上の可能性を支持。


今後の課題

  1. 二軸加速度方向の合力の比較。

  2. 後→前方向の切り替え時間,棘状波形の有無の検討。

  3. 足の状態や歩容パターンによるグルーピングと比較検討。