立方骨サポートインソールによる運動パフォーマンスの向上効果について

―脳卒中片麻痺患者への臨床的応用の可能性を探る―

The effects of physical performance using insole
〇中村充雄(OT),奥村宣久(OT),木村浩一(Dr.)
北海道文教大学人間科学部作業療法学科

Key words: 運動能力,インソール,立方骨


【緒言】

リハビリテーションにおいて,足底挿板(以下,インソール)を用いて足関節障害への治療やバランス能力の向上,運動パフォーマンス向上を目的としたアプローチが実施されている。脳卒中片麻痺患者に対してインソールを用いて足部のアーチを外的に構築することにより基本動作能力が向上することが報告されており,日常生活動作の自立へと繋がる治療方法であると考えられ,広く作業療法場面に応用することが可能であると考えられる。

そこで我々は,近年開発された立方骨サポートインソールBMZを用いて,そのインソールの効果を検討することを目的に,装着の有無による運動パフォーマンス即時効果の比較を行った。また,本結果から脳卒中片麻痺患者への臨床的応用についての検討を行った。


【方法】

  • 対象:本研究の趣旨を十分に理解し同意を得ることが出来た健常成人女性4名(平均年齢20.5歳)とした。

  • 装着条件:本実験ではBMZを装着したのはすべて右足とした。

  • 評価方法:下肢の機能的運動能力テストである**Functional Ability Test(FAT)**を用いた。
    FATは以下の4種目から構成されるが、本研究では(1)〜(3)の3種目を実施した。

    1. 片脚幅跳び

    2. 片脚8字跳躍

    3. 片脚反復横跳び

    4. 片脚段差昇降(※未実施)

各テストにおいて十分に練習を行い,各施行間には十分な休憩を取った。各テストで2回測定を行い,BMZの有無はランダムに設定した。統計処理には各評価項目におけるBMZの有無によるパフォーマンス比較を対応のあるt検定を用いて検討し,有意水準は5%とした。


【結果】

FATの結果は以下のとおりであった。

  • BMZ未装着時
     片脚幅跳び:1045mm
     片脚8字跳躍:14.06sec
     片脚反復横跳び:9.51sec

  • BMZ装着時
     片脚幅跳び:1082mm
     片脚8字跳躍:13.61sec
     片脚反復横跳び:8.83sec

t検定の結果、片脚8字跳躍(p = 0.04)および片脚反復横跳び(p = 0.01)において有意な差を認めた。


【考察】

本結果より、BMZ装着により運動パフォーマンスが向上することが認められた。これは、立方骨サポートにより足部のアーチが保持され、身体運動方向の転換や瞬発力の発揮において、より高い下肢(足部)の安定性が生まれたことによるものと考えられる。

脳卒中片麻痺患者に対し、このBMZを用いることで、低下した随意性での下肢支持性の補助、そして転倒などのリスク管理に非麻痺側による支持性の向上へ繋げる一助となる可能性があると考える。

今後は健常成人の対象をさらに増やして検討しつつ、脳卒中片麻痺患者に対する日常生活動作の安定性の評価を行い、臨床作業療法場面における治療的介入の可能性を検討・実践していきたいと考える。